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由貴の夏休みphoto日記B



8月△日 晴れ時々曇り

昨日から実家に帰省しています。
勇はもちろん、今年はカズも一緒です。
ちなみに姉は僕より一日後に帰るみたい。
(実は姉さんとはあまり仲良くないんだよね)

僕の父さんは、夏は仕事が忙しく、
ほとんど家に帰ってこないので、
今年も勇の家にお世話になる事にしました。
「貴重な部活休みを満喫するぜ!」と、
カズはいつも以上にテンション高めです。

勇の家で一息ついた後、僕たち3人は、
海水浴に行く事にしました。
小さい頃、勇と一緒に遊んでた浜です。

「こっちの海、水冷たくてキレ―だなぁ」
カズが感動していました。
僕と勇にとっては見慣れた海だけど、
なんかこういうのって嬉しいな。


しばらくのんびりしていると、
派手めの女の子達3人組が声をかけてきました。
「ねぇ!ウチらも3人やけん一緒に遊ばん?」

う〜ん…こういうの、苦手なんだよね。
でもカズは案の定、ノリノリです。
「方言いいねぇ!やっぱ夏はギャルだよ」
こないだ「ギャルは苦手」とか言ってたくせに。

海の家でかき氷を食べる事になったので、
僕はトイレを理由にこっそり抜け出して、
人気の無い北側の入り江に向かいました。

思ったとおり、ここは人がいなくて静かです。
せっかくだから写真でも撮ろうかな。


……と思ってたら、
浜辺の方からカズがやってきました。

「あれ?女の子達は?」
「さっき海の家に中国人の留学生が来てさぁ、
注文困ってたから、勇が通訳したワケよ。
そしたら女の子達み〜んな勇に行っちゃって、
そっからはもう勇祭りですよ。
狙ってたマミちゃんも勇にクギヅケ。
やっぱギャルはダメだね、
お嬢様ぁ〜みたいな感じがイイね俺は」

そうそう、勇って実は結構モテるんだ。
中学生の時、彼女っぽい子もいたし。

「フ〜ン、残念でした」
僕はカメラを岩の平たい場所に置くと、
ドボン!と海に入りました。
深さは胸まであるけど、水は透き通っていて、
足元の砂つぶまでハッキリ見えます。

……あ、綺麗な貝がある。
珍しい、鮮やかな青だ。

「…ゲホッ、ゴホゴホ!」
「ギャハハ!何ムセてんの?」
「貝を拾おうと……でも、どっかいっちゃった」
「まかせろ、俺が取ってやる」

カズは勢いよく潜りました。が、
「ウワァー!目がァ!しみる!!」
当たり前じゃん海なんだから。バカだなぁ。
「もういいよ、ゴーグル持って来てないし」
「うるせぇ、ぜってー取るぞ」

そう言うと、カズは何度も海に潜りました。
目がだんだん真っ赤になってきてるのに、
僕が止めても絶対あきらめません。

そして……、

カズが浮かんでこなくなったので、
不安になって声をかけようとした時、

バシャッと大きなしぶきが上がり、
水面から明るい色の髪が飛び出してきました。
「獲ったどー!!これだろ!?青いの!」
「それ!カズすごいすごい!!」
「な?取るっつったら取るよオレ様は」

カズは得意げに笑いながら、
僕の手のひらに青い貝殻を乗せました。
濡れた貝はキラキラと輝いて、
なんだか心の奥がじんとしました。

「―――よっしゃ!」
突然、カズが貝殻ごと僕の手を持ち上げたので、
僕がビックリしていると、
「さ、行こうぜ!」

……もしかして、迎えに来てくれたの。
僕がひとりぼっちだったから?

もしかして、ホントのほんとうは、
優しかったりするのかな?


「オーイ2人とも!早く戻ってきてよー!」
浜辺の方から声がしたので、
振り向くと、勇が両手を振っています。
「カズく〜ん!一緒にかき氷食べようよ〜」
あのマミちゃんもニコニコと笑っています。

「やたっ!ホラ由貴早くしろ、置いてくぞ!」

……やっぱり、さっきのは気のせいかな。
僕の考えすぎだね。
だって見て?めっちゃ高くスキップしてる。
砂浜なのに。すこぶる上機嫌だよ。
「いやっほ〜!マミちゃん待っててねぇ〜!」
ギャルは嫌いなんじゃないの(ブツブツ)。

おわり